perlboot - Perl オブジェクト指向導入編
他の言語でオブジェクトに親しんでいたのでなければ、他の Perl オブジェクトの ドキュメントのいくつかは気力をくじかせるでしょう; オブジェクトを使うための基本的なリファレンス perlobj、Perl の オブジェクトシステムの特性のチュートリアル的な紹介 perltoot 等のように。
そこで、別のアプローチをとって、オブジェクトの経験がないことを 前提にしましょう。 もし、サブルーチン(perlsub)や、リファレンス(perlref等)、 パッケージ(perlmod) を知っているのならそれが役に立ちますので、 もしまだわからなければまずそちらを先に知っておくべきでしょう。
動物さんたちにちょっとしゃべってもらいましょう。
sub Cow::speak { print "a Cow goes moooo!\n"; } sub Horse::speak { print "a Horse goes neigh!\n"; } sub Sheep::speak { print "a Sheep goes baaaah!\n"; }
Cow::speak; Horse::speak; Sheep::speak;
これは次の結果を得ます:
a Cow goes moooo! a Horse goes neigh! a Sheep goes baaaah!
目新しいことはありません。 別々のパッケージに分かれていて完全なパッケージ名を使って呼び出していますが、 単なるサブルーチンです。 では、牧場を作ってみましょう。
# Cow::speak, Horse::speak, Sheep::speak as before @pasture = qw(Cow Cow Horse Sheep Sheep); foreach $animal (@pasture) { &{$animal."::speak"}; }
これは次の結果を得ます:
a Cow goes moooo! a Cow goes moooo! a Horse goes neigh! a Sheep goes baaaah! a Sheep goes baaaah!
うわ。
ここにあるシンボリック coderef のデリファレンスはかなり粗雑です。
no strict refs
モードも考えてみると、大きなプログラムには全然向きません。
なぜその様なものが必要とされるのでしょう?
それはパッケージ名を、そのパッケージの呼び出そうとしているサブルーチンの
名前から分離できないからです。
ではどうしましょう?
いまのところ、Class->method
は Class
パッケージの method
サブルーチンを呼び出すとだけ言っておきましょう。
(ここで "Class" は "カテゴリ" の意味です; "学級" ではありません。)
完全に厳密ではありませんが、少しずつ進めていきましょう。
これは次のように使います:
# Cow::speak, Horse::speak, Sheep::speak as before Cow->speak; Horse->speak; Sheep->speak;
そしてこれは次の結果を得ます:
a Cow goes moooo! a Horse goes neigh! a Sheep goes baaaah!
別におもしろくもありませんね。 同じ文字数ですし全て定数で変数もありません。 でも、今度はパッケージ名を分離できるのです。 次を見てください:
$a = "Cow"; $a->speak; # invokes Cow->speak
ああ!
関数名からパッケージ名を分けれるので、パッケージ名に変数を
使うことができるのです。
そして今度は use strict refs
が有効であってもちゃんと機能するのです。
新しい矢印呼び出しを使って、裏庭の例に戻ってみましょう:
sub Cow::speak { print "a Cow goes moooo!\n"; } sub Horse::speak { print "a Horse goes neigh!\n"; } sub Sheep::speak { print "a Sheep goes baaaah!\n"; }
@pasture = qw(Cow Cow Horse Sheep Sheep); foreach $animal (@pasture) { $animal->speak; }
みんなちゃんとしゃべってくれます! また今度はシンボリック coderef を使っていなくて安全です。
でも、コードをよく見てみると、各 speak
関数はよく似た構造を持っています。
print
演算子と、2 語を除くと同一のテキストを含んでいるだけです。
共通箇所を分解するのはよいことです; 例えば、後で全ての goes
を says
に
変えることもできるようになります。
また、大騒ぎすることなくそれを行う方法も実際ありますが、メソッド呼び出しの 矢印が何を行ってくれているのかについてここで少し 知っておかなければなりません。
メソッド呼び出し:
Class->method(@args)
は、Class::Method
関数を次のように呼び出そうとします:
Class::method("Class", @args);
(もし関数を見つけることができなかったときには、「継承」が走査されます。
これに関してはあとで説明します。)
これは最初のパラメータとしてクラス名を得ることを意味します
(もし引数がなければそれがただ一つのパラメータになります)。
このことから Sheep
のおしゃべり関数を次のように書き改めることができます:
sub Sheep::speak { my $class = shift; print "a $class goes baaaah!\n"; }
また他の動物たちも同様になります:
sub Cow::speak { my $class = shift; print "a $class goes moooo!\n"; } sub Horse::speak { my $class = shift; print "a $class goes neigh!\n"; }
それぞれにおいて $class
にはその関数の特定の値を得ます。
しかしもう一度考え直してみると、かなりよく似た構造になっています。
さらに分離することはできないでしょうか?
それは同じクラスの別のメソッドを呼ぶことで可能です。
speak
から補助メソッド sound
を呼び出してみましょう。
このメソッドはその鳴き声として固定文字列を提供します。
{ package Cow; sub sound { "moooo" } sub speak { my $class = shift; print "a $class goes ", $class->sound, "!\n"; } }
さて、Cow->speak
を呼び出すと speak
では $class
として
Cow
を得ました。
これを使って moooo
を返す Cow->sound
メソッドを選択します。
では Horse
の時はどこが変わるでしょう。
{ package Horse; sub sound { "neigh" } sub speak { my $class = shift; print "a $class goes ", $class->sound, "!\n"; } }
パッケージ名と鳴き声の指定だけが変わりました。
ところで Cow と Horse で speak
の定義を共有する方法はないでしょうか?
それが継承です!
共通の関数のパッケージとして Animal
を作ります;
ここで speak
を定義します
{ package Animal; sub speak { my $class = shift; print "a $class goes ", $class->sound, "!\n"; } }
次に各動物たちに対して、それぞれの鳴き声の定義と一緒に、
Animal
から「継承」します:
{ package Cow; @ISA = qw(Animal); sub sound { "moooo" } }
ここで、@ISA
(「イズア」と発音します))配列が加えられていることに
注意してください。
少々これについて説明します。
ところで、ここで Cow->speak
を呼び出すとなにが起こるのでしょう?
まず、Perl が引数リストを構築します。
今回は単純に Cow
だけです。
それから Perl は Cow::speak
を探します。
しかしそれはありません; そのため Perl は継承配列 @Cow::ISA
を調べます。
それは存在し、名前を一つ Animal
を格納しています。
Perl は次に Animal
の speak
を Animal::speak
の様に調べます。
今度は見つかりました; そこで Perl はこの関数をさっき作っておいた引数リストで
呼び出します。
Animal::speak
関数においては、$class
は Cow
になります
(これが一つめの引数です)。
そのため $class->sound
の呼び出しにおいて Cow->sound
を
得ます; 最初は @ISA
を探すことなく調べます。
そしてこれは成功します。
この魔法の @ISA
変数は、Cow
が Animal
の「一種である(is-a)」と
宣言しています。
これが単なる一つの値ではなく配列であることに注意してください;
稀ではありますが、メソッドが見つからなかったときに探す親クラスを
一つ以上もつこともあるためです。
もし Animal
も @ISA
をもっていたらそれも同様に調べられます。
デフォルトでは、検索は @ISA
の中を再帰的に、深さ優先、左から右に
行われます(代替案については mro を参照してください)。
典型的に、各 @ISA
がただ1つのみ要素を持っています
(複数の要素を持っていれば複数の継承、複数の難問を持っています);
そのため良好な継承ツリーを得ます。
use strict
を有効にしたとき、@ISA
は明示的なパッケージ名を
持っていないため、そしてレキシカル変数 ("my") でもないため警告を受けます。
この変数はレキシカル変数にはできません;
(継承メカニズムが探索できるように、パッケージに属していなければなりません)
これに対処する方法は 2 つあります。
一番簡単な方法はパッケージ名をつけて使うことです:
@Cow::ISA = qw(Animal);
またはこれをパッケージグローバル変数として宣言します:
package Cow; our @ISA = qw(Animal);
もしくは暗黙に名付けられたパッケージ変数を許可することです:
package Cow; use vars qw(@ISA); @ISA = qw(Animal);
Animal
クラスが他の (オブジェクト指向) モジュールから来ている場合、
Animal
が Cow
クラスの規定となることを指定するために、単に
use base
を使います:
package Cow; use base qw(Animal);
これでかなり単純になりました!
ねずみを追加してみましょう; その声は微かでしょう。
# Animal package from before { package Mouse; @ISA = qw(Animal); sub sound { "squeak" } sub speak { my $class = shift; print "a $class goes ", $class->sound, "!\n"; print "[but you can barely hear it!]\n"; } }
Mouse->speak;
これは次の結果になります:
a Mouse goes squeak! [but you can barely hear it!]
ここでは Mouse
は Animal->speak
を呼ぶのではなく
自分用のおしゃべりルーティン Mouse->speak
を持っています。
これは、「オーバーライド」と呼ばれています。
事実、Mouse
が Animal
の一種であるという必要はまったくありません。
おしゃべり(speak
)に必要なメソッドは全て Mouse
に定義されています;
これは「ダックタイピング」(duck typing) として知られています":
「あひるのように歩いてあひるのように鳴くなら、あひると呼ぼう」
(James Whitcomb)。
しかし、Mouse
が確かに Animal
であると結論づけるためのより詳細な検査を
出来ることはおそらく有益なので、実際には Animal
を基底として Mouse
を
定義する方が良い(つまり、「Animal
から Mouse
を派生させる方が
良い」)です。
さらに、このような重複は頭痛の種となります (しかしコードの再利用は
実際には継承の良い理由ではありません; よい設計プラクティスは基底クラスが
使えるところではどこでも派生クラスが使えるべきと指示していて、
コードの再利用が継承の唯一の基準だと効果がないかもしれません。
単に Mouse
は常に Animal
のように動作するべきと言うことを
覚えておいてください)。
それで、Mouse
を Animal
にしましょう!
明らかな解決方法は Animal::speak
を直接起動することです:
# Animal package from before { package Mouse; @ISA = qw(Animal); sub sound { "squeak" } sub speak { my $class = shift; Animal::speak($class); print "[but you can barely hear it!]\n"; } }
Animal::speak
を使っていることに注意してください。
代わりに Animal->speak
を起動すると、Animal::speak
への最初の引数は
"Mouse"
ではなく自動的に "Animal"
になるので、Animal::speak
での
$class->sound
の呼び出しは Mouse->sound
ではなく
Animal->sound
になります。
また、メソッド矢印 ->
なしだと、Animal::speak
への最初の引数を
自分自身で指定する必要があるようになります; これが $class
が明示的に
渡されている理由です: Animal::speak($class)
。
しかし、直接 Animal::speak
を起動するのは大変です: 最初に、speak
メソッドは Animal
クラスのメンバであることを仮定しています;
Animal
が実際には独自の基底クラスから speak
を継承していたら?
もはや speak
にアクセスするのに ->
を使わないので、特別なメソッド
検索機構が使われておらず、speak
は発見すらされていません!
二つ目の問題はより微妙です: Animal
はサブルーチン選択に
ハードコーディングされています。
Animal::speak
が存在すると仮定してみましょう。
後で起こることは、誰かが Mouse
を Animal
ではなく Mus
から
継承することでクラス階層を拡張します。
Animal::speak
の起動が Mus::speak
の起動も変更されない限り、
分類学の世紀的な価値が破壊されます!
ここにあるものは脆弱で漏れやすい抽象化です; これは保守の悪夢の始まりです。 必要としているものは出来るだけ仮定を少なくして正しいメソッドを探す能力です。
よりよい 解決法は、継承チェーンのどこから speak
の検索を始めるのかを
Perl に伝えることです。
これはメソッド矢印 ->
の修正版で達成できます:
ClassName->FirstPlaceToLook::method
それで、改良された Mouse
クラスは:
# same Animal as before { package Mouse; # same @ISA, &sound as before sub speak { my $class = shift; $class->Animal::speak; print "[but you can barely hear it!]\n"; } }
この構文を使うことで、speak
の探索を Animal
から開始することができ、
それから直接見つからなくても Animal
の全ての継承連鎖を使う
ことができます。
いつも通り、speak
への一つめのパラメータは $class
になるため、
もはや $class
を明示的に speak
に渡す必要はありません。
しかし、二つ目の問題はどうでしょう?
まだメソッド検索に Animal
をハードコーディングしています。
この起動で Animal
が特別なプレースホルダ SUPER
で置き換えられると、
Mouse
の @ISA
の内容が使われ、$ISA[0]
から始められます。
それで、以下のようにして全ての問題が修正できます:
# same Animal as before { package Mouse; # same @ISA, &sound as before sub speak { my $class = shift; $class->SUPER::speak; print "[but you can barely hear it!]\n"; } }
一般的に、SUPER::speak
は現在のパッケージの @ISA
から speak
を
実装するクラスを探し、最初に見つかったものを呼び出します。
プレースホルダは SUPER
と呼ばれます; その他の言語では基底クラスを
"superclasses"(スーパークラス)として参照し、Perl は折衷主義だからです。
以下のように呼び出すと
$class->SUPER::method;
$class
がたまたま現在のパッケージでない限り、$class
の @ISA
を
見ない ことに注意してください。
これまでに見てきたものは、メソッド矢印構文:
Class->method(@args);
その等価な文:
$a = "Class"; $a->method(@args);
構築される引数リスト:
("Class", @args)
呼び出され方:
Class::method("Class", @args);
しかし、Class:method
が見つからなければ @Class::ISA
が(再帰的に)
実際 method
を含んでいるクラス(パッケージ)を探すために使われます。
この簡単な構文を使うことでクラスメソッド、(複数の)継承、オーバーライド、 そして拡張を行えるようになりました。 これまでに見てきたもので共通処理を抽出し、(しかし、これは決して継承のよい 理由ではありません!)、様々な実装に再利用する良好な方法を提供できます。
それで、データについては?
Animal
クラスと Horse
クラスを書いてみましょう。
{ package Animal; sub speak { my $class = shift; print "a $class goes ", $class->sound, "!\n"; } } { package Horse; @ISA = qw(Animal); sub sound { "neigh" } }
Horse->speak
を呼び出すことで Animal::speak
に渡り、そこから
Horse::sound
に鳴き声を作りに戻ります; 結果は次のようになります:
a Horse goes neigh!
しかしこのすべての Horse オブジェクトは完全に同一です。 サブルーチンを追加しても、全ての馬が自動的にそれを共有します。 同じ馬を作るが目的ならすばらしいことですが、 個々の馬を識別したい時にはどうすれば良いのでしょうか? 例えば最初の馬に名前を付けたい時にはどうすれば良いのでしょう。 もちろん、それぞれの馬の名前を分離して維持する方法があります。
これは言わば、特定の Horse
のインスタンスに別の名前を付けたいです。
Perl では任意のリファレンスなら「インスタンス」になることができます; そこでまず単純なリファレンスとして、馬の名前を保持するスカラリファレンス を使ってみましょう。
my $name = "Mr. Ed"; my $horse = \$name;
これで $talking
はインスタンス指向のデータ(名前)のリファレンスに
なりました。
最後のステップは特別な演算子 bless
を使ってこのリファレンスを実際の
Horse
のインスタンスにすることです。
bless $horse, Horse;
これはパッケージ名 Horse
に関する情報をリファレンスに指されているものに
格納する操作を行います。
これにより、$horse
が Horse
のインスタンスになったといいます。
これで、個々の馬を識別できます。
リファレンスはそれ以外に変化はありませんし、伝統的なデリファレンス操作を
使うこともできます。
メソッド矢印はクラス(パッケージ名)の時と同じように、インスタンスに対しても
使うことができます。
では、$horse
の作り出す音を取り出してみましょう:
my $noise = $horse->sound("some", "unnecessary", "args");
sound
を呼び出すために、Perl は始めに $horse
が bless された
リファレンス(つまりインスタンス)であることを確認します。
それからいつも通り引数リストを構成します。
さて、ここがおもしろいところです: Perl はインスタンスが bless されている
クラス、今回は Horse
を取り出し、サブルーチンの場所を特定するためにその
クラスを使います。
今回は、Horse::sound
が直接に (継承を使うことなしに) 見つかります。
結局、最初の行は以下のように書いたかのようになります:
my $noise = Horse::sound($horse, "some", "unnecessary", "args");
この最初のパラメータは、先ほどのようなクラス名ではなく、インスタンスの
ままである点に注意してください。
この結果 neigh
を復帰値として受け取り、これが $noise
変数に
代入されます。
もし Horse::sound が見つからなかったときには、スーパークラスの中でメソッドが
見つかるかどうか @Horse::ISA
配列をたどります。
クラスメソッドとインスタンスメソッドとの違いは、その最初の引数が
インスタンス(bless されたリファレンス)なのかクラス名(文字列)なのかという
点だけです。
最初の引数としてインスタンスを得ることができるので、 インスタンス固有のデータにアクセスすることができます。 今回は、名前にアクセスする方法を追加してみましょう:
{ package Horse; @ISA = qw(Animal); sub sound { "neigh" } sub name { my $self = shift; $$self; } }
Horse::name
の内側では、@_
配列の中身は:
($horse, "some", "unnecessary", "args")
なので shift
は $horse
を $self
に保管します。
それから $self
は通常通り $$self
でデリファレンスされ、"Mr. Ed"
と
なります。
インスタンスメソッドでは $self
という名前の変数に、クラスメソッドでは
$class
という名前の変数に最初の引数を shift
するのは慣習です。
それから、以下の行は:
print $horse->name, " says ", $horse->sound, "\n";
以下を出力します:
Mr. Ed says neigh.
もちろん、すべての馬を手で作っていては時々失敗することもあるでしょう。 また馬の「内臓」が外から見えてしまうのはオブジェクト指向 プログラミングの約束事を一つ破っています。 もしあなたが獣医であればそれもよいでしょうが、自分の馬を持ちたいだけであれば そうではありません。 なので Horse クラスのクラスメソッドの内部の扱いを見てみましょう:
{ package Horse; @ISA = qw(Animal); sub sound { "neigh" } sub name { my $self = shift; # instance method, so use $self $$self; } sub named { my $class = shift; # class method, so use $class my $name = shift; bless \$name, $class; } }
以下のように、この新しく作った named
メソッドで馬を作ることができます:
my $horse = Horse->named("Mr. Ed");
ここで私たちはクラスメソッドに戻っていることに注意してください;
また Horse::named
の2つの引数は Horse
および Mr. Ed
になります。
bless
演算子は \$name
を bless するだけでなく、そのリファレンスを
返します。
この Horse::named
メソッドは「コンストラクタ」と呼ばれます。
ここではコンストラクタを named
としたので、このコンストラクタの引数が
特定の Horse
の名前ということを示しています。
(家系や誕生日を記録するといった)違った方法でオブジェクトに「命を吹き込む」
別のコンストラクタにはまた違った名前をつけることができます。
しかし、もっと制限の課せられていた言語から Perl へと来たほとんどの人々は
new
という一つのコンストラクタに、様々な引数の処理方法を加えて使います。
どちらの方法でも、オブジェクトを作り出すあなたの特定のやり方をあなたが
ドキュメント化している限りは問題ありません。
(そしてそれを行って きている、そうですよね?)
でもこのメソッドに Horse
特有のことってありますか?
答えは No です。
従って、Animal
から継承して何かを構築するのと同じレシピを使うことが
できます;
ここに name
と named
を置いてみましょう:
{ package Animal; sub speak { my $class = shift; print "a $class goes ", $class->sound, "!\n"; } sub name { my $self = shift; $$self; } sub named { my $class = shift; my $name = shift; bless \$name, $class; } } { package Horse; @ISA = qw(Animal); sub sound { "neigh" } }
あぁ、でもインスタンスに対して speak
を呼び出したらどうなるのでしょう?
my $horse = Horse->named("Mr. Ed"); $horse->speak;
これはデバッグ情報になります:
a Horse=SCALAR(0xaca42ac) goes neigh!
なぜこうなってしまうのでしょう?
それは、この Animal::speak
ルーチンはその最初の引数には
インスタンスではなくクラス名が来ると思っているからです。
インスタンスが渡されるとブレスされたスカラリファレンスを文字列として
使うことになってしまい、それが先ほど見たものになってしまうのです。
今必要なことは、クラスに対して呼ばれたのかそれともインスタンスに対して
呼ばれたのかを区別する方法です。
一番率直な方法は ref
演算子を使うことです。
これは bless されたリファレンスに対して使うと文字列(クラス名)を返し、
(クラス名のような)文字列に対して使うと空文字列を返します。
ではまず変わったことがわかるように name
メソッドを変更してみましょう。
sub name { my $either = shift; ref $either ? $$either : "Any $either"; }
ここで ?:
演算子はでリファレンスするか派生された文字列かを簡単に
選択するために使っています。
さてこれでこのメソッドをインスタンスでもクラスでも使えるようにできました。
最初のパラメータを保持する変数の名前を使う意図に合わせて $either
に
変更しています:
my $horse = Horse->named("Mr. Ed"); print Horse->name, "\n"; # prints "Any Horse\n" print $horse->name, "\n"; # prints "Mr Ed.\n"
そして speak
もこれを使うように直してみましょう:
sub speak { my $either = shift; print $either->name, " goes ", $either->sound, "\n"; }
そして sound
は既にクラスでもインスタンスでも動作するように
なっているので、これで完了です!
次は私たちの動物に食べることをしつけてみましょう:
{ package Animal; sub named { my $class = shift; my $name = shift; bless \$name, $class; } sub name { my $either = shift; ref $either ? $$either : "Any $either"; } sub speak { my $either = shift; print $either->name, " goes ", $either->sound, "\n"; } sub eat { my $either = shift; my $food = shift; print $either->name, " eats $food.\n"; } } { package Horse; @ISA = qw(Animal); sub sound { "neigh" } } { package Sheep; @ISA = qw(Animal); sub sound { "baaaah" } }
そして試してみます:
my $horse = Horse->named("Mr. Ed"); $horse->eat("hay"); Sheep->eat("grass");
これは次のように出力します:
Mr. Ed eats hay. Any Sheep eats grass.
パラメータを持ったインスタンスメソッドは、そのインスタンスとパラメータの リストとともに呼び出されます。 そのため最初の呼び出しは次のようになります:
Animal::eat($horse, "hay");
インスタンスにもっとデータがほしくなったらどうすればよいでしょう? たいていの面白いインスタンスはそれぞれがリファレンスや他の オブジェクトだったりする多くの要素で構成されています。 これらを格納する一番簡単な方法はハッシュを使うことです。 ハッシュのキーはオブジェクトの部品(「インスタンス変数」若しくは 「メンバ変数」と呼ばれます)の名前として提供され、それに対応する値は、まぁ、 その値です。
でも馬をハッシュにするにはどうしたらよいでしょう? オブジェクトはブレスされた任意のリファレンスであるということを 思い出してください。 リファレンスを参照している箇所を適切に修正すれば、bless された スカラリファレンスと同じように簡単に、それを bless された ハッシュリファレンスで作ることができます。
では羊を名前と色を持つようにしてみましょう:
my $bad = bless { Name => "Evil", Color => "black" }, Sheep;
これで $bad->{Name}
は Evil
になり、$bad->{Color}
は
black
になります。
でも $bad->name
でその名前にアクセスできるようにしたいですが、それは
スカラリファレンスを前提にしているので台無しにされています。
でも心配しないでください、これはとっても簡単に直ります。
一つの解法は Sheep
で新しく定義することで Animal::name
と
Animal::named
をオーバーライドすることですが、後から Animal
に
追加されたメソッドではやはり混乱することになり、それらに全てについても
オーバーライドする必要があります。
従って、基底クラスのデータ配置と異なるデータ配置を定義するのは決してよい
方法ではありません。
実際、全ての場合で bless されたハッシュを使うのが良い考えです。
また、これは低レベルの作業を行うコンストラクトが重要な理由です。
それでは、Animal
を再定義しましょう:
## in Animal sub name { my $either = shift; ref $either ? $either->{Name} : "Any $either"; } sub named { my $class = shift; my $name = shift; my $self = { Name => $name }; bless $self, $class; }
もちろん、特定の色の Sheep
を構築するためにはまだ named
を
オーバーライドする必要があります:
## in Sheep sub named { my ($class, $name) = @_; my $self = $class->SUPER::named(@_); $$self{Color} = $class->default_color; $self }
(@_
は named
への引数を含んでいることに注意してください。)
この default_color
って何でしょう?
named
が名前だけで呼ばれても色を設定する必要があります; そこでクラス毎に
デフォルトの色を持てるようにしています。
羊には白を定義しておきましょう:
## in Sheep sub default_color { "white" }
それでこれは:
my $sheep = Sheep->named("Bad"); print $sheep->{Color}, "\n";
以下を出力します:
white
これで、色に関しては Sheep
に特有なことは何もなくなったので、
Sheep::named
を削除して代わりに色を扱うために Animal::named
を
実装しましょう:
## in Animal sub named { my ($class, $name) = @_; my $self = { Name => $name, Color => $class->default_color }; bless $self, $class; }
そして追加したそれぞれのクラスで default_color
を定義する必要が
ないように、「デフォルトのデフォルト」を提供するメソッドを Animal
で直接
定義しておきます:
## in Animal sub default_color { "brown" }
もちろん、name
と named
だけがオブジェクトの「構造」を
参照していたので、残りのメソッドはそのままにしておくことができます;
speak
は前のままでそのまま動作します。
でも私たちの馬の全部が全部茶色では飽きてしまいます。 なので色を取得/設定するためのメソッドを一つか二つ作ってみましょう。
## in Animal sub color { $_[0]->{Color} } sub set_color { $_[0]->{Color} = $_[1]; }
引数にアクセスするための別の方法に関する補足:
$_[0]
は shift
をせずにすぐにに使うことができます。
(これは頻繁に呼び出される箇所で時間を節約することができます。)
さてこれで Mr. Ed の色を変えることができます:
my $horse = Horse->named("Mr. Ed"); $horse->set_color("black-and-white"); print $horse->name, " is colored ", $horse->color, "\n";
これは次の結果になります:
Mr. Ed is colored black-and-white
さて、これまでにクラスメソッド、コンストラクタ、インスタンスメソッド、
インスタンスデータ、そしてアクセッサをも見てきました。
しかしこれらは Perl の提供しているもののまだ始まりにすぎません。
まだゲッター(getter)でありセッター(setter)でもあるアクセッサやデストラクタ、
間接オブジェクト表記、オーバーロード、"isa" および "can" によるテスト、
UNIVERSAL
クラス、等々についてはまだ話し始めてもいません。
これらは他の Perl ドキュメントでカバーされています。
願わくば、これがあなたの一歩となりますように。
もっと詳しい情報は、 perlobj (ここで基礎を見た、Perl オブジェクトに関するすべての強固な詳細)、 perltoot (オブジェクトを知っている人のためのチュートリアル)、 perltooc (クラスデータの取り扱い)、 perlbot (もっとトリッキーなこととか)、 そして Damian Conway の優秀な Object Oriented Perl 等の書籍を 参照してください。
おもしろさを垣間見れるモジュールとして、Class::Accessor, Class::Class, Class::Contract, Class::Data::Inheritable, Class::MethodMaker, Tie::SecureHash。
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