NetHackにかつて存在したraiden
という神がどこから来たのかを
数回にわたって追いかけています。
(第1回/第2回)
(これはRoguelike Advent Calendar 2020 13日目の記事です。)
前回までのあらすじ
"Funk & Wagnalls Standard Dictionary of Folklore, Mythology, and Legend"
"Pacific Mythology"という本にraiden
という神に関する記述がありそうなことがわかりました。
archive.orgの電子図書館
実はここまでは夏頃には調べが付いていました。 こうなれば後は図書館で直接文献を確認したいところですが、 このコロナ禍で図書館利用も何かと制限があります。
さてどうしたものか、と思っていたら、 archive.orgの電子図書館に行き当たりました。 どうやら Internet Archive、図書館で死蔵されている本のデジタルアーカイブ化事業を開始【やじうまWatch】 で記事になっているもののようで、 メールアドレスでアカウントを作ると対象の本を1時間ブラウザ上で閲覧できるようになります (ちなみに1時間で一度返却すれば何度でも閲覧可能です。おそらく予約が入っていると次の人に閲覧する権利が移るのでしょう)。そして2冊ともこの図書館で閲覧できることが分かりました。これはありがたい…。
ということでさっそく該当の箇所を見てみることにしました。どちらもかなりのページ数で全部読むには1時間では到底足りませんが、辞典形式になっていて確認したいのは1項目だけなので、10分も掛からずに見つけられました。
"Funk & Wagnalls Standard Dictionary of Folklore, Mythology, and Legend" 920ページ
*Raiden* or *Kaminari Sama* The Japanese God of Thunder, depicted as a demon with
claws and a string of drums. He is fond of eating human navels. The only protection
against him is to hide under a mosquito net.
*Raiden* (literally _rai_, 'thunder, _den_, 'lightning') The Japanese God of
Thunder, depicted with claws, red skin and a demon's head. It was
Raiden who prevented the Mongols from invading _Japan_ in 1274. He is
shown in art sitting on a cloud sending forth a shower of lightning-
arrows upon the invading fleet. Only three men escaped. See also 'Gods
of Japan' under _Gods_; _Japan_; _Kamikaze_.
こうしてみると雷様要素を"Funk & Wagnalls"から、 神風要素を"Pacific Mythology"から取ってきて合体させた (させてしまった)のが"Encyclopedia Mythica"の項目のように見えます。 確かにこれが出典のようです。
もう一つ興味深いのは、図書館で確認できた"Funk & Wagnalls"が1972年出版ということです。
これはもちろんAD&Dよりも(さらにD&Dよりも)前ですので、
AD&Dの神としてのraiden
もこれが出典の可能性があります。
予告
ということでraiden
の出典にたどり着いてこの問題は決着、と
思ったのですが、ひょんなことからもう少しだけこの話は続きます。
それは次回の講釈で。